プロフィール

犬と暮らしの研究室

1999年、まだ20代の頃、小さなトリミングショップを開いたのが、すべての始まりでした。5坪ほどの店舗に、トリミングテーブルとハサミだけを揃えて、たった一人で。それから15年、お客様や仲間に支えられながら店舗を増やし、ペット事業を広げていきました。

見てきた現実

転機は、県の動物愛護に関する有識者会議のメンバーに選ばれたことでした。そこで手渡された資料の中で、犬猫の殺処分数の多さを初めて目の当たりにします。「知っていたつもり」だった数字の重さに、愕然としました。この世界で生かしてもらっている者として、見て見ぬふりはできない。そう強く感じ、殺処分を待つ犬猫を保護し、里親を探す活動を始めようとしました。けれど、すぐに壁にぶつかります。当時は保護活動などの実績もない、どこの誰かも分からない人間には、施設は犬猫を託してくれませんでした。そのとき、施設の方からかけられた問いが、今も自分の中に残っています。「では、あなたに譲渡したとしましょう。けれど、問題行動を起こして手放された犬が、新しい里親のもとでも同じ問題を起こしてしまうとしたら?あなたはその解決方法をお持ちですか?」答えられませんでした。救うことの先にある「根本的な解決」を、自分は何も持っていなかったのです。

海を越えて見た景色

根本的な解決の糸口を探す中で、たどり着いたのがドイツでした。「犬猫の殺処分ゼロ」という国で、実際に何が起きているのかをこの目で見たい。その一心で、ヨーロッパ最大規模の保護施設「ティアハイム・ベルリン」を訪れました。

そこで見た光景は、想像を超えていました。広々とした施設、動物一頭一頭のニーズに配慮された環境、そして年間9割以上が新しい飼い主に巡り会う仕組み。

さらに衝撃だったのは、街そのものでした。ノーリードの大型犬が悠然と歩き、電車やカフェにも犬が当たり前に同席する。滞在中、来る日も来る日も、犬の吠え声を一度も耳にすることがなかったことに、心底驚かされました。「自分が知っていた犬との暮らしとは、何もかもが違う」そのカルチャーショックを抱えて、日本に帰ってきました。

たどり着いた答え

帰国後、気づいたことがあります。困っている一頭を救うことも大切だけれど、それだけでは、蛇口を締めずに水を汲み続けるようなもの。本当に必要なのは、動物の立場に立って「なぜその行動をするのか」を理解し、問題が起きる前に、犬と人がより良い関係を築けるようにすること。その考えのもとで、それまでの仕事のあり方を大きく見直しました。子犬の大切な社会化期に寄り添う「犬の保育園」の立ち上げや、科学的根拠に基づいたアプローチを、より多くの方に届けるために、国際ドッグトレーナー資格CPDT-KAを取得。応用行動分析学(ABA)を軸に、動物福祉の視点から、犬・飼い主さん・トレーナー、三方が笑顔になれる関わり方を追求しています。

これから

「叱る」のではなく「理解する」。犬の行動には、必ず理由があります。この考え方が一つでも多くのご家庭に広がり、犬と人が心地よく暮らせる社会に近づくことを願って、これからも発信を続けていきます。犬と暮らしの研究室